思いもかけぬコロナ禍の拡大で、当館も臨時休館をさせていただいております。そこで、しばらくのあいだ、当館所蔵作品を毎週1点ずつご紹介いたします。
心に垂れ込める暗雲を、ほんのひと時でも押しのけていただければ幸いです。

マリー・ローランサン(フランス 1883~1956)
「犬を連れた婦人と少女」(1931年) 油彩

この甘やかな絵は当館の人気作品の一つです。淡く美しい色調の軽やかな衣装をまとう女性達に、作者ローランサンが「海の娘」と呼ぶ真珠が上品なアクセントを添えます。

ローランサンは、パリで婦人服の仕立てや刺繍の仕事をする母に育てられました。美しい絹糸や飾り布のなかで育まれた感覚が、作品のなかに生きているかもしれません。

彼女は、20代で若い画家や詩人たちが集う刺激的なモンマルトルのアトリエ「洗濯船」から画家の道を歩み始め、後にはローランサンならではのフェミニンな絵を好むパリ上流社会の女性たちの肖像画を描く人気作家となりました。

ところで、この作品が収蔵されたときに選ばれた額縁は、珊瑚色と白の色使いにシンプルな彫り模様が施された可愛いもので、作品の雰囲気にぴったりです。ご来館の機会があれば、作品と額縁の取り合わせの妙にもチェックを入れてみてください