思いもかけぬコロナ禍の拡大で、当館も臨時休館をさせていただいております。そこで、しばらくのあいだ、当館所蔵作品を毎週1点ずつご紹介いたします。
心に垂れ込める暗雲を、ほんのひと時でも押しのけていただければ幸いです。

鈴木其一(日本 1796~1858)
「楊貴妃」三幅対 絹本着色 軸装

当館が所在する綿内のお隣、保科地区には牡丹で有名な清水寺(せいすいじ)があり、例年ですと5月には多くの人が花を楽しみにやってこられます。

牡丹は美人の代名詞ですが、しばしば楊貴妃とセットであつかわれる花でもあります。今回はそんな作品をご紹介。作者は江戸後期に活躍した琳派の絵師、鈴木其一です。

細かな描きこみが、とにかく素晴らしい作品。楊貴妃の贅沢な衣装・髪飾りや椅子の覆いには、繊細な模様が、美しい色彩で、丁寧に描きこまれています。右側の花壇を囲むレンガ状のものにまで、一つ一つ模様が描かれているのには驚きます。

表具も本紙の美しさに相応しいもので、上品な一文字に取り合わせた中廻しは華やかな金茶系の市松模様。模様の四角一つ一つには、金糸で文様が施されています。

写真では細部がわかりにくく残念ですが、またの日のご来館の際には、どうぞ目を凝らして、じっくりとご堪能ください。