「蘇李訣別」
『蘇李訣別』は1930(昭和5)帝国美術院第11回展出品作。原題は「蘇武の苦節」。前漢時代、勇猛果敢な武将李陵と精錬無比の不屈の勇士蘇武の二人は武帝の命を受け当時の漢族を脅かしていた遊牧騎馬民族である匈奴と戦い、李陵は降伏し匈奴の人となり、蘇武は降伏せず極寒のバイカル湖の果てまで流され、想像を絶する極貧・孤独の毎日を送っていた。二人は20年来の友人であったが、この図は匈奴の王に依頼され、蘇武の降伏勧告にいった李陵がそのことには一切ふれず別れを告げる場面である。なお武帝の死後、昭帝の即位を契機に匈奴との間に友好関係が結ばれ蘇武は19年ぶりに祖国に帰れることとなった。