思いもかけぬコロナ禍の拡大で、当館も臨時休館をさせていただいております。そこで、しばらくのあいだ、当館所蔵作品を毎週1点ずつご紹介いたします。
心に垂れ込める暗雲を、ほんのひと時でも押しのけていただければ幸いです。

 

アンリ=エドモン・クロス(フランス 1856~1920)
「雲」(制作年不詳)

今回は、光が画面からあふれてくるような作品をご紹介いたします。

明るい陽光につつまれて輝く、南フランスあたりの郊外風景。画面半分以上を占める大空に、白く輝く雲が沸き立ちます。空を映す川面も明るく、岸辺のポプラの葉はキラキラと陽光を反射。果樹や花畑が囲む小屋の白壁は眩しいほど。

この作品は大きめの点々ばかりで描かれていますが、それぞれの点々は互いに重なることなく、きれいな色をしています。作者は「新印象主義」と呼ばれるグループの一人で、点描はこの仲間の最大の特徴でした。色彩をもっとも輝かせるため、個々の色のままの点を置き、見る人の視覚上で初めて混ざり合うことを狙ったのです。

長野県も爽やかな青空と若い緑が美しい季節となってきました。昨秋の水害を乗り越えた桃の樹々が、濃い色の花を咲かせています。来年は何の心配もなく、この信州の美しい風景を楽しみたいものです。